善き人のためのソナタ2008/10/08 02:26

善き人のためのソナタ

こんなに感動した映画はない、とは言わないが、久しぶりだ。ラストシーン、あのページを開いた瞬間のHGW XX/7の驚きとうーん、なんと言えばいいんだろう、喜びといっては薄っぺらいし、感動というのとは違うし、、、その気持ちが感じられるような気がした。 振り返ってみれば、ありがちなストーリーだし、ありがちな感動なのかもしれないけど、でも、何かが違うような気がした。 なんともいえない静けさの中で進んでいく話。東ドイツの体制側と反体制ではなかった作家、女優。体制側にいたはずの彼が信じていたものと同じものを、上司、上官は信じてはいなかった。徐々に崩れていく信念。そこで露になってくる一人の人間としての思い。彼が守ってきたものは守る価値があったのだろうか。才能がありながら、仕事をさせてもらえず自殺してしまう演出家。10年前は栄光に輝いていたのに。そういった価値を考えずに、芸術家を体制に服従させるだけのために腐心しているかのような上司。芸術とはそんなものではないだろう。 結局、彼は閑職に追いやられてしまい、ベルリンの壁が崩れても新聞配達かビラ配りかわからないが、ろくな仕事にはつけなかった。でも、そんな、名もない一人の良心が、一人の小説家を救い、東ドイツの何かを救ったように思う。

よかったー。